品川にあるデニーズ。隣の席で。

今日、品川にあるデニーズで打ち合わせをしていると、隣にいた年輩の女性2人の話が聞こえてきた。聞こえてきたのは毎日の料理のことで、僕は自分でも料理をすることがあるので、料理の話をしている婦人方の会話には非常に共感できるものがあった。

 

そうそう!

分かる!

 

打ち合わせの最中だが、とても隣の会話が気になるのは、自分自身の心情に近いものを捉えている会話が多かったから。直ぐにでも、隣のテーブルに入りたい気持ちを抑えながら、何とかその場を流すことが出来た。

 

暫くして、婦人方が帰ろうとしたとき、僕の中で(話したい!)という衝動に駆られた。一人の人がお手洗いに立ったとき、残っていた婦人に声をかけた。

 

「さっき話してたのは料理の話ですよね?僕も料理するのでとても頷くところがあったんですよ。分かる、分かる、って感じで笑いが込みあがるのを必死に堪えてたんです。」

 

驚いた様子で、何度か婦人は聞き返してきた。

一体、どうして話しかけられているのか?

何を、話してきているのか?

その辺りを理解しようとしていたのだろうか。

 

話が飲み込めてくると、だんだん戸惑いの表情が綻んできて、時々は笑顔がこぼれ出す。この頃から、婦人からも話しだした。

 

程なくしてお手洗いに立った婦人が戻ってきた。会話はいったんそこで途切れる。僕も、打ち合わせ相手と顔を見合わせる。

 

ところが、僕が声をかけた婦人は、僕たちとの会話の一部始終をその方に共有した。話にまた火が付いた。今度は、戻ってきた婦人の方とも話をする。

 

そこから4人での話が暫く続いて、随分と話が膨らんでいった。

後で知ったのだが、婦人は80歳というご高齢。

しかし、とても若かった。

 

時間にして10分に満たなかったと思う。

 

80歳と35歳の会話は、とてもフラットで心地よく、もう随分と話をしたかの様な雰囲気をお互いが共有していた。