話している時に、フッと。

映画をレンタルするとき、観たい映画を選ぶ基準というのは一人ひとり違うだろうと想う。僕は、いつからか、この選ぶ基準が人から聞いたものの中で、何かこう重なりを感じながら、それが込みあがって溢れ出た時に、その作品を借りようとする様になった。


多くの場合は、1人から聞いた話だけで決定することはなくて、何人かの人の話が積み重なってきた時だとか、タイミングが噛み合う時だとか、そういうのがあるのだが、そうして選ぶ映画というのは外れることは殆どないし、自分色に染まったりだとか、好みの範囲に収まることがない。


映画と共に、自分という範囲が常に広がっていく感じだ。

だから、僕はよくレンタル屋さんでも隣にいる人に声をかける。


「最近、観た映画の中で、おススメのものはありますか?」
「いやぁ・・・そうですね・・・ないですね。」


何人かに声をかけた内の印象的な1人。

応えてくれる。

 

尋ねたことに応じてくれて、何かを搾り出す様にして思い出してくれている様な印象もあるが・・・結果的に、おススメのものは出てこなかった。


その時の彼。


思い出してくれている僅かの時間の間で感じた印象は、薄っすらと陰が指していたというか色が透けて見えたというか、その場に居なくなった感じがした。


声をかけていると、時々にしてこういう状況に遭遇する時がある。何かしらの現象が起きていてその様になっているのか、それとも僕の一方向的な見方だったり思い過ごしだったりしたものなのか、いずれにしてももう少し会話が弾もうものなら、一体どんなことが起きていたのか尋ねてみたくなるくらい、興味が湧いた瞬間。


話していて、フッとその場から体重が軽くなっているかの様な、そんな雰囲気に出会ったこと。

 

皆さんはありますか?